潜水漁の話

先週、少し書かせてもらった教育旅行(体験学習旅行)のモニターツアー。個人的には反省点が多く、あらためてコーディネイトの難しさを痛感したものの、現場スタッフの皆さんの手助けもあり、無事終了することができました。本当にありがとうございます!

さて、下田での提供している体験学習は、海を満喫し、漁村を歩き、漁家民宿に泊まって、漁師まちの営みを知ってもらうことがコンセプトです。

今回、泊まらせていただいた民宿Tさんも、民宿の営業と併せて、男衆は漁師をしてきた家系であり、夕食後、親父さんから昔の漁の様子を聞くことができました。

この家は潜水漁を営む漁家です。潜水漁とは、ダイビングとは異なって、タンクを背負うのではなく、船からホースで空気を送ってもらいながら行う漁のこと。田牛(とうじ)地区では、昔は10件以上の家で行われていたようですが、過疎化の進行と漁自体の過酷さ故、現在はわずか2件のみだそうです。

  
  

写真の鉄仮面、実は昔の潜水漁で使われていたものです。鉄仮面だけでも相当な重さがあるのですが、胸の前後に重りをつけ、両足には鉄靴を装着!全部身につけたら半端な重さじゃありません。(海中で浮力に対抗するには、このぐらいないとダメみたいです。)
鉄仮面のなかに船から空気が送られ、首やあご等で仮面内にある弁を開閉し、空気の量で浮力を調整します。獲物は、サザエやアワビ、天草等々。

親父さんによる話では、
 ・漁は過酷そのもの。当時は、今ほど道具が発達しているわけではなく、空気を送るホースが外れる等の事故もあった。
 ・特に怖いのが潜水病で、体を壊したり、死んだ人も少なくない。
 ・潜水病になった人の腕は、血管のなかで気泡が膨張しているのがわかり、気泡を小さくするためには漁師を再度海に沈めた。
 ・過酷ではあるが、当時の収穫量は潜水漁師の方が圧倒的に多く、給料は普通の漁師の6〜7倍だった。
 ・それゆえ、潜水漁の漁師のもとには、嫁にもらってほしいという見合い話が殺到した。
 ・潜水漁を行う漁師は、神様みたいに扱われたため、潜水漁師は仕事以外では、箸より重いものは持たなかった。
などなど。

愛嬌よくしゃべってくれるにも関わらず、たくさんの経験を積み、海の怖さを知っている親父さんから発せられる言葉には、強烈な説得力があり、漁師という仕事の壮絶さとカッコ良さを感じました。S級サザエの収獲も、実はこの潜水漁で行われています。自分達が食べているサザエのひとつひとつにも、きっと色々なドラマが隠されているのかもしれません。

(反S)